メディカル翻訳雑感

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Aspirin and Prostaglandins

今回は Medicurio というチャンネルの Aspirin and Prostaglandins(アスピリンとプロスタグランジン)を紹介します。

Aspirin and Prostaglandins - Medicurio

この動画はアスピリンとその作用メカニズム、それに関連して、プロスタグランジンという体内でつくられる物質について解説しています。 自動生成ではない正確な英語字幕が用意されているので活用してください。

動画の長さは約9分。 専門知識のない人には少し長いかもしれません。2、3分程度に区切って少しずつ繰り返しながら見るとよいでしょう。 「理解する」というよりは「慣れる」感覚で。

中間の 3:04~4:24 あたりでアスピリンの作用メカニズムについて解説しています。 この部分の概要を以下に記します。

ホスホリパーゼA2という酵素が、細胞膜を構成するリン脂質から脂肪酸を切り取ります。 この切り取られた脂肪酸がアラキドン酸です。 アラキドン酸はナレーションでは触れられていませんが、3:20 の画面上方の( )内に記されています。 3:30 の画面に矢印で描かれている経路を「アラキドン酸カスケード」と言います。

次に、シクロオキシゲナーゼという酵素のはたらきで、アラキドン酸からプロスタグランジンH2が生成され、 さらにプロスタグランジンH2からさまざまな種類のプロスタグランジンがつくられます。 これらのプロスタグランジンには多くの機能がありますが、ナレーションでは、 (1)視床下部にはたらいて体温を上昇させる、 (2)免疫細胞を刺激して炎症を起こさせる、 (3)痛みに対する神経の感受性を高める、 (4)血液凝固を引き起こす、 (5)血管を収縮させたり拡張させたりする、 (6)胃の粘液を増やして胃酸から胃壁を保護する、の6つを挙げています。

アスピリンはシクロオキシゲナーゼの活性を阻害してプロスタグランジンがつくられないようにします。 それによってプロスタグランジンが引き起こす痛みや発熱、炎症などを抑えるのです。 アスピリンは、感染が原因で起こる炎症だけでなく、関節リウマチのような自己免疫疾患によって生じる炎症も抑えます。

prostaglandin:プロスタグランジン
fatty acid:脂肪酸
phospholipase A2:ホスホリパーゼA2
arachidonic acid:アラキドン酸
cyclooxygenase:シクロオキシゲナーゼ
hypothalamus:視床下部
sensitize:(神経の)感受性を高める
clot:(血液を)凝固させる
lining:(消化管などの)内壁